ココナッツオイルと豆乳を主材料として作る乳成分ゼロのプラントバター。
以前『パンに塗る!ビーガンバター』というレシピを公開していますが、手に入れやすい材料で簡単に美味しく作れる反面、汎用性には欠けるんです…。(←いやいや、とはいえパンに塗るだけでなく焼き菓子やパン生地にも使えるということを補足しておきます、念のため。)
ということで今回は、料理全般、バタークリーム、クロワッサンやパイ生地の折り込み用となんでもござれの植物性バター。
今回のレシピでは「レシチン」を使用してオイルと豆乳をしっかりと乳化*させます。「レシチンって何?」という方もご安心を。下記本文でしっかり説明していきます。
では、さっそくまいりましょう!
*乳化:本来なら混ざり合わない水と油が均一に混ざり合っている状態。
食材リスト&ひとこと解説
■無香ココナッツオイル
常温でも固まる特性を利用します(融点は約24°c)。
ココナッツオイルには安価な調理用、エクストラバージン、無香タイプなどがありますが、一般的なバージンやエクストラバージンにはココナッツ特有の香りと味があるため、バター作りには向きません。
このレシピには必ず、無香(無臭)タイプのものを選んでください。
常温で固まらない液体タイプ(MCTオイル)も、もちろんNGです。
ココナッツオイルは必ず、無香(無臭)タイプを使う。
英語パッケージの場合:
- 【refined】精製された
- 【deodorised】脱臭された
- 【neutral taste/flavour】くせのない味
などの表記があれば、無香タイプです。
■クセのない油
バターの硬さ調節のために液体の油も加えます。
使う油は米油や菜種油、グレープシードオイルなど、味にクセのないものを選んでください。オリーブオイルのように風味の強い油はNG!
■無調整豆乳
豆乳に酢を足して、凝固させることによって植物性の簡易バターミルク風を作ります。
これがバターの風味の元になります。
「バターミルクって何?」という方に。→Wikipedia: バターミルク
なるべく大豆固形分の高いものを選ぶことをお勧めします。大豆固形分9%と11%(同メーカー)で比較したことがありますが、11%の方がよりミルキー風味のある仕上がりになりましたよ。たかだか数パーセントと甘く見てはいけません笑
マルサンの14%濃厚豆乳使ってみたら、よりいいんだろうなーと思うんだけど…。残念ながら、オーストラリアでは売ってないのですよー(筆者は豪在住)。
豆乳をアーモンドミルクやカシューナッツミルクに変えても美味しいです。この場合、ナッツと水だけで濃厚に作った自家製ミルクを使うといいですよ。(市販のものはナッツの濃度が低く、また副材料が入っているため)。
■リンゴ酢 (apple cider vinegar)
上記でお話しした、豆乳に入れるお酢。
リンゴ酢以外にも、米酢・白ワインビネガー・ココナッツビネガー・レモン汁で実験しましたが、リンゴ酢がベストという結果(個人の好みもあるとは思いますが…)になっています。米酢は微妙でした。
植物性のバターを作るうえで、ほのかな酸味はあったほうがいいです。強すぎたら美味しくないですが、全くないとね、んー、何と言いましょうか・・・「あるほうが、しっくりくる!」語彙力なくてスミマセン!
■液体レシチン
「レシチン」とは、卵黄、大豆などの食品に含まれるリン酸脂質の一種です。
水と油を混ざり合わせる乳化作用を持っているので食品や化粧品などに添加物として利用されたり、また体に必要な成分でもあるためサプリメントとして市販もされています。
レシチンの乳化作用をうまく利用した食品例は、マヨネーズ。
一般的なマヨネーズの主原料は油、酢、それから卵黄です。本来なら混ざり合わない油と酢(水分)が卵黄に含まれるレシチンの作用によって均一に混ざり合い、その後も分離せずに粘度を保ってくれるんです。
卵黄の代わりに大豆のレシチンの作用を利用したものが、豆乳マヨネーズです。
それから、皆さんがスーパーで見かけるパン類やチョコレートなどの食品にもレシチンは使われていますよ。今度、チョコレートの原材料名欄をよく見てみてください。『乳化剤』と表示してあればその正体はレシチンです。
マヨネーズの例は卵黄や大豆に含まれるレシチンを食材ごと使用したものですが、
このレシピでは大豆やひまわりの種から抽出されたレシチンを使用します。<下写真>
液体状の他、顆粒/粉状もありますが、それぞれ用途が異なります。
このレシピに使用するのは液体レシチンです。顆粒や粉状は油となじみが良くない(油に溶けにくい)ので不向きです。
原料が大豆のものとひまわりのものがありますが、どちらを使用しても◎。iHerb やアマゾンで販売しているようです。
以下、それぞれの特徴(と使った感想)
大豆レシチン:黄みがかった明るい茶色、透明<上写真参照>。ほぼ無味無臭。
ひまわりレシチン:透明だが大豆レシチンに比べて暗い茶色。かすかにひまわりの種の香りがするが、気になるほどではなくバターにすればわからない。大豆レシチンで作ったバターに比べると、ほんの少しくすんだ色味に仕上がる(並べて比べなければわからない程度の差)。
”液体レシチン” でグーグル検索をかけると化粧品添加用の商品も多くヒットするようなので購入の際はご注意を。
「このバターレシピでも、マヨネーズと同じく豆乳を使うんでしょ。なんで、わざわざレシチンを添加しなきゃならないの?」と思われた方・・・鋭いですな笑
正直なところ、このレシピからレシチンを抜いてもバターを作ることは可能です。が、しかし…
【比較実験】植物性バターにレシチンは必要か?で、レシチンを添加しないレシピで作ったバターとの比較をしていますので、興味のある方はよんでみてくださいね!
■塩
レシピカードに記載している量で作るとほんのり塩気を感じる、減塩タイプ(塩分約0.7%)になります。私はこれで料理、お菓子、パン作りにと使い回しています。
- 有塩バター(塩分約 1.4~1.5 %):塩を倍量にする
- 無塩バター:塩は入れない
用途や好みに合わせて調節してくださいね!
*記載の塩分量はあくまでも目安です。
作り方、コツなど
まずは、下準備…
►豆乳にリンゴ酢を入れて軽く混ぜる。そのまま10分置く。
10分置いておくことで、豆乳のたんぱく質をしっかり凝固させます。この間に風味も形成されます。
►この10分の間に、ココナッツオイルの準備、その他の材料の計量。
ココナッツオイルはスプーンやナイフで削り取れる硬さなら、そのまま(固まったまま)で計量してOKです。その後、湯銭または電子レンジで7~8割方溶かし、あとはグルグルかき混ぜて余熱で残りを溶かしましょう。余熱でちょうど全部溶ける程度が最適。
「余熱で溶かす」この工程がとても重要です。
ココナッツオイルの温度が高いと、きちんと乳化しないことがあります。また、バターが冷え固まるまでに時間がかかり、結果、バターが固まる前に油分と水分が分離してしまうリスクが高まります。
温め過ぎてしまったら、ある程度温度が下がるまで待ちましょう。
オイルが硬く固まっていて計量前に湯煎等する場合は特に、加熱のし過ぎに注意してください!
►レシチンとオイルをあらかじめ混ぜて、なじませておく。
この作業は飛ばすこともできますが、やっておいたほうが次の作業(撹拌~乳化)スムーズになります。レシチンがミキサーやブレンダーカップの底に溜まったり、縁に付いたままだと、撹拌に時間が掛かりバターの温度を上げてしまう原因になりかねませんので。
液体レシチンを上手に扱う方法
トロトロ。ベタベタ。見た目はメープルシロップやアガベシロップのようですが、そもそも油なのでシロップとは性質が異なり少々扱いずらい液体レシチン。できるだけ瓶や作業台などにレシチンを垂らさないように作業しましょう。
《正確な計量》
キッチンスケール(量り)を使うのがベター。
►片手にレシチンの瓶、もう片方の手に折りたたんだキッチンペーパーを持ったまま、計量。その後すぐに、瓶の口周りにレシチンが付かないようにキッチンペーパーで抑える。口に少し垂れてしまってもそのままキッチンペーパーで拭き取れる。
とはいえ、少量だとなかなか正確に量れないキッチンスケールも多いので、
以下、計量スプーンを使いたい場合:
►レシチンの瓶から直接、計量スプーンに注ぐ。溢れない程度に、しかし、なみなみと。
►ティースプーンやスプーンの柄などを使って、ココナッツオイルの中で計量スプーンの内側を洗うように、レシチンを掻き出す。<下写真>
粘度の高さゆえ計量スプーンを逆さまにしたくらいでは、スプーンにへばり付いた分は取れません。スプーンに付いている分も全て使わないと正確に計量したことにはなりませんよね。そこで、液体レシチンの特性(親油性:油になじみやすい)を利用したこの方法を使えば、計量スプーンでの計量も簡単になります。
《後片づけ》
もしキッチンの作業台やシンクなどにレシチンを垂らしてしまった場合は、キッチンペーパーで拭き取ってそのままゴミ箱へ。うまく取れない場合は、キッチンペーパーにサラダ油などを少量含ませてから拭けば簡単に落ちますよ。
間違っても濡れ布巾で拭いたり、食器洗いスポンジを使って水で洗い流そうとしたりしてはいけません。布巾やスポンジがベタベタになるどころか、レシチンを塗り広げることになって被害が拡大します笑。
ボウルやお皿、スプーンでも一緒。まずはしっかり拭き取ってから食器洗剤で洗ってくださいね~。
では、作っていきましょう。
1.すべての材料を合わせてミキサー、ハンドブレンダーなどでしっかり攪拌。乳化させる。
►乳化させられるパワーがある調理器具いずれでもOK!
2.素早く型に流しいれて、冷蔵庫または冷凍庫へ。
冷凍庫でしっかり固めた方が型から取り出しやすくなります。
また、急冷することで分離のリスクが低くなります。
型について:シリコン製の型、底から押し出せるタイプの製氷皿が取り出しやすくおすすめ。
タッパーなどの容器をを使う場合は、直接流し入れずラップをぴったりと敷いて使うといいですよ。
3.バターが冷えてしっかり固まったら型から取り出す。
保存の方法
冷蔵庫にて2~3週間ほど保存できます。
冷凍なら数か月~半年、保存可能です。
あると便利なキッチン道具
記事内で使っているものと同じサイズのシリコン型。
私が愛用している押し出し式の製氷皿。上部が硬めの素材で出来ているので安定感があり冷凍庫までの移動も楽々。バターの型としての他、トマトペーストやバジルソース等の小分け冷凍にも重宝!
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それでは、レシピカードをどうぞ。
バターを冷やし固める時間は、調理時間に含まれておりません。
材料
- 無調整豆乳 (※1) 90 g
- リンゴ酢 小さじ 1
- 無香ココナッツオイル 260 g
- くせのない油 (米油、グレープシードオイルなど) 45 g
- 液体レシチン (※2) 8 g
- 塩 (※3) 小さじ ½
手順
下準備
- 豆乳と酢を混ぜ、そのまま10分置いておく。
- (ココナッツオイルが固まっている場合)湯銭や電子レンジなどで少々加熱し7-8割溶かし、残りは余熱で溶かす。
- レシチンとオイルをあらかじめ混ぜて、なじませておく。*この作業は飛ばすこともできます。詳細は記事内の本文参照ください。
作り方
- すべての材料をミキサーやハンドブレンダーなどお手持ちの調理器具で攪拌。乳化させる。
- 型に流し入れ、冷蔵庫または冷凍庫で冷やし固める。(※4)
- バターが冷えてしっかり固まったら型から取り出して完成!
コツ・ポイント / その他の追加情報
倍量で塩分量1.4~1.5%ほどの有塩バター、塩なしで無塩バターになります。
*塩分量のパーセンテージはあくまで目安。 ※4:冷凍庫でしっかり固めた方が型から取り出しやすくなります。また、急冷することで分離のリスクが低くなります。
あなたの写真をぜひインスタグラムで見せてください!
ハッシュタグ:#えだまめキッチン
タグ付けをお忘れなく。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
xoxo Lily
大変大変参考になり、感激しました。
惜しげもなく素晴らしい知識を公開してくださり、ありがとうございます。
いえいえ~。こちらこそコメントありがとうございます。
こういった反応をいただけると「この記事を書いた甲斐があったなー」と、とても嬉しくなります。
なるほど
昨日ヴィーガンバターを作りました
身体に優しい味がしました´ω`●
色々と詳しく教えてくださりありがとうございます
私も研究してみます〜!!
こちらこそ、コメントありがとうございます。
この記事が少しでもお役に立てたならうれしく思います。
研究楽しんでください!
詳しいレシピありがとうございます!!参考にさせていだきます(*^^*)
ちなみにカカオバターで作られたときはどのような感じになりましたか?
こちらこそ、コメントいただきありがとうございます。
カカオバターを主原料としてプラントベースバターを作ると、ココナッツオイルで作ったものに比べ融点が高くなるいうのが特徴になります。
この特徴がメリットではあるのですが、それ以外に特筆する利点はなかったというのが、個人的な感想です。
それでも一時期はハマってよく作っていました(研究含め)が、ここ最近もう何年も作っていません。食品用の無香カカオバターが非常に手に入りにくい、ということも作らなくなった一つの要因です。
私はオーストラリア在住なので日本ではどうかわかりませんが、食品用で流通しているもののほとんどがローカカオバター(raw cacao butter)で、無香はほとんどが食品グレードではないものばかりなんですよ。
と、長くなりましたがカカオバター使用についてはこんな感じです。
ちなみにですが、カカオバターを使う場合はこのレシピのココナッツオイルそのまま置き換えれば良いというわけにはいきませんので、念のため😌